大阪府枚方市 こども相談チャットアプリ「ぽーち」導入インタビュー

サービス名 子ども相談チャットアプリ ぽーち
自治体名 大阪府 枚方市 子ども未来部 まるっとこどもセンター
導入時期 2023年04月
自治体人口 約392,000人

導入目的

現代の子どもたちは、いじめ、不登校、家庭内での悩みなど、さまざまな課題に直面しています。しかし、悩みを抱えていても「どう相談したらいいのか」「どこに相談すればいいのか」が分からず、心の中に抱え込んでしまうことも少なくありません。

枚方市ではこれまでも、子どもたちの悩みに耳を傾けるため、学校、教育委員会、児童福祉部局が一体となって支援体制を構築してきました。府からのスクールカウンセラー(SC)の派遣や、市独自の「心の教室相談員」、さらに市長部局が運営する各種相談窓口など、多方面から子どもたちを支える取り組みを行ってきました。また、現場の先生たちは、日々子どもたちに寄り添い、身近な存在として子どもたちの小さな変化やSOSをキャッチする努力を重ねています。

そうした中で、さらに子どもたちが「自ら声を上げやすい環境」を整えるために、ICTを活用した新たな仕組みづくりの検討を始めました。小さい芽のうちに、子どもの悩みやトラブルをしっかり受け止め、支援することで、大きな悩みやトラブルに発展してしまうことを防ぎたい、小さい芽のうちに素早く解決することを地道に積み重ね、子どもの明るい未来を実現したい、そんな思いを持って導入の検討を進めました。

導入の決め手

令和3年度、枚方市では「子どものSOSに対応しやすくなるツール・システム」をテーマに公民連携プラットフォームでの公募を実施。
NTTデータ関西と連携し、「SNS相談と気持ちの視覚化」の実証実験を行いました。この実験では、小学校2校、中学校2校を対象に、チャット形式の相談窓口を設置しました。

実証を行うことで、「気持ちや体調を先生たちに知ってほしい」というニーズやチャット相談のニーズが高いことがわかりました。
実証期間の約2カ月間で240件以上の相談のやり取りが成立し、深刻な相談については学校や教育委員会、児童福祉部局と連携し、見守りにつなげることができました。

この成果は、現場の先生方と教育委員会、福祉部局とのより迅速かつ的確な対応ができる可能性を感じさせるものでした。

導入後の変化・感想

導入して2年になり、これまでも多くの相談が寄せられています。1つの相談を長く継続しているものもあれば、同じ子どもから複数の相談が寄せられるものもあります。友達関係や家族の相談だけでなく、勉強や部活、恋愛、性の悩みなど、相談の種類も多岐にわたります。それら1つ1つの相談に相談員が日々丁寧に向き合っています。

相談員は臨床心理士または公認心理士の資格を持った人を雇用しておりますが、相談員1人では対応が難しい相談があった場合は、SNS相談の特徴を活かし、チームで一緒に考えて対応しています。命に係る深刻な相談があれば、必要に応じて教育委員会とも連携し、情報共有、協議を行いながら対応しています。

また、相談内容からは、ぽーちがあったからこそ誰かに相談することができたのだろうと思えるものが多くあります。
これだけ多くの子ども本人とつながることができている相談窓口はなかなかありません。
こうしたことから、現代の子どもたちにとって、SNS相談の形態は、相談ハードルを下げる有効なツールであると感じています。

今後の展望

枚方のすべての子どもたちが「日常的に気軽に相談できる環境」を作るとともに、困ったことがあった時には、聞いてくれる大人がいる、周囲の人に頼って良いのだという認識を子どもたちに持ってもらえるようにしたいと考えています。

何か困りごとを抱えた子どもに、「相談してもいいよ」と呼び掛けても、「何を相談したらいいのか」、「どんなことが相談できるのか」、「どこで相談できるのか」、相談へのハードルを高く感じる子どもたちが多いのではないでしょうか。

全ての子どもたちが「気軽に相談できる環境」を作ることは、先生方、スクールカウンセラー、教育委員会、市の各種相談窓口など、さまざまな支援が連携し、力を合わせることで初めて実現できるものです。その中にぽーちを加えることでさらに多くの子どもの声を聞くことができるようになると思います。

早い段階にぽーちのようなツールを使うことで、子どもたちに「相談する」という行為に慣れてもらい、「相談する」ことへの心理的なハードルを下げられれば良いなと考えています。そうすれば、将来本当に相談すべきことが訪れた時にも、これまでは声を上げづらかった子どもも、自ら声を上げやすくなるのではないでしょうか。

令和6年度からは「ぽーち」の利用対象を18歳までの市内在住・在学・在勤の子どもたちに拡大し、スマートフォン向けアプリの配信も開始しました。この新たな展開により、さらに多くの子どもたちが必要なときに相談できる環境が整備されています。
これからも、市全体で子どもたちを支える取り組みを進め、すべての子どもたちが笑顔で未来に向かえる環境づくりを目指していきます。