生活保護のケースワーカー、その多忙さと解決策とは

憲法に定められた国民の三大権利の1つである「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための最後のセーフティネットと呼ばれる生活保護。今回はその申請から受給後のサポートまでを幅広く行うケースワーカーにフォーカスしたコラムです。

そもそも生活保護とは

今回の題材であるケースワーカーが従事する生活保護について解説します。

制度

生活保護制度とは、さまざまな理由により生活に困窮している人々に対して、1950年に制定された生活保護法により、憲法が定める健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立した生活ができるように援助する制度です。

種類

申請者の状況に応じて8つの扶助があります。
生活扶助:食費や被服費、水道光熱費など日常生活に必要な費用
住宅扶助:家賃、土地代など住むために必要な費用
教育扶助:義務教育を受けるために必要な費用
医療扶助:病気や怪我の治療・療養のために医療機関に払う費用
介護扶助:介護保険サービスの利用で必要な費用
出産扶助:出産時の分娩などに必要な費用
生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用
葬祭扶助:葬祭に必要な費用

受給世帯の推移

生活保護の受給世帯数は、1950年に現行の生活保護制度が開始されてから年々増加傾向にあり、直近の20年間では約1.7倍と急増しています。受給人者数も200万人を超えており、60人に1人が援助を受けている計算になります。世帯別では高齢者世帯の割合が56%を占めており、今後も少子高齢化の深刻化と並走する形で増加することが見込まれています。

手続きの流れ

①相談
福祉事務所に生活保護の申請を考えている旨を相談します。
 この際に、制度の説明と合わせて生活福祉資金や各種社会保障施策の活用も検討します。
②申請
福祉事務所で生活保護の申請を行います。
③各種調査の実施
 生活保護費を支給して良いか判断するために以下の調査を行います。
 ・生活状況等を把握するための実地調査
 ・預貯金、保険、不動産等の資産調査
 ・扶養義務者による仕送りなどの援助の可否の調査
 ・年金などの社会保障給付、就労収入などの調査
 ・就労の可否の調査
④保護費の支給
調査の結果から、厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費を算出し、その金額から収入を差し引いた額が保護費として支給されます。

ケースワーカーの業務

ケースワーカーの業務は、保護費が支給されるまでの支援だけではありません。保護を受給せずに生活が出来るようになるにはどうすればよいかと親身に考え、各種社会保障制度の知識を蓄えることも必要な仕事です。

ケースワーカーの業務内容

生活保護の業務内容として具体的なタスクは、下記のグラフにまとめられています。
申請時の相談や訪問調査、報告書の作成に加えて、受給開始後も定期的に生活状況の調査を伺いに訪問したり、就労や就学のためのアドバイス、高齢者や障害者にケア指導を行ったりと、継続した支援も実施しています。

厚生労働省:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/130

業務における課題

多忙なケースワーカーの業務における課題としてはどんなことが挙げられるのでしょうか。
先ほどの業務からピックアップした内容や、調べていく中で感じたことをまとめます。

人手不足

2023年4月の統計で、受給世帯総数1,638,787世帯(厚生労働省令和3年度被保護者調査より抜粋)に対し、ケースワーカーは全国で19,195人が配置されているため(総務省令和3年地方公共団体定員管理調査結果より抜粋)、1人のケースワーカーが約85世帯を担当している計算になり、社会福祉法で定められた標準の配置人数(市部:80世帯に1名、郡部65世帯に1名)を上回っている現状があります。あくまで平均値なので、受給世帯が多い地域のケースワーカーは更に大きな負担がかかっていることは想像に難くありません。

訪問調査

古い統計ですが、平成15年度では1世帯当たりの年間訪問件数は3.86回となっており、一人当たりの担当世帯数である85件から年間の合計訪問回数を算出すると328回/年となります。1日当たり最低でも1.5件は訪問調査を実施している計算になります。業務の負担に加えて肉体的な過酷さもあるのではないでしょうか。
参考:厚生労働省 生活保護制度運営における地域間の較差の状況

知識量

ケースワーカーに求められる知識は生活保護法にとどまらず、福祉六法に該当する児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法に関しても一定の水準が求められる上に、申請者とのやり取りの中で正確な説明、回答をする必要があります。通常業務の合間に知識を蓄えると言っても、簡単ではないでしょう。

ケース記録(報告書)の作成

ケースワーカーは申請者や保護者とのやり取りをケース記録(報告書)にまとめ、記録しておく必要があります。保護決定の根拠や支援の過程を客観的に示すだけでなく、ケースワーカーの日常業務の報告書としての役割も果たします。複数件の訪問調査先で会話内容のメモを取り、庁内に戻ってからそのメモを基にケース記録を作成するとゆう流れが一般的なようです。

訪問調査の効率化は「さぽとも」

いくつか課題を推察してみましたが、実はいくつかの課題を解決できるソリューションがあるんです笑
その名も「ケースワーカー支援システム“さぽとも”」です!
受給者の“サポートを共にする”とゆうキャッチフレーズから命名された製品です。
訪問調査をタブレット1台で済ませることが出来るアプリケーションだと思ってください。
訪問先で会話内容を入力しながら、複雑な法制度や上司からのアドバイスを確認すると共に、入力内容から簡易的なケース記録の作成まで出来るので、課題解決と業務効率化に繋がります。是非、製品紹介ページもご覧ください!

今後の課題

さぽともの紹介をしたものの、ケースワーク業務すべての負担を軽減できる訳ではありません。将来的には、AIを活用した音声認識や文字起こし、AIのその先のテクノロジーを駆使して、今よりもっと人と向き合うことにコミットできる快適な環境になればと心から思っています。来たる未来でその一翼を担っているのが我々であることができるように、今後も邁進していく所存です。

引用
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/hogo/seiho.html
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
https://job.kiracare.jp/note/article/34851/
https://jichitai.works/article/details/1887
https://www.tokyo-np.co.jp/article/185229
https://www.jt-tsushin.jp/articles/research/book-_caseworker_yamanaka
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/130