介護保険制度と介護サービス
高齢化が進むにつれ、介護を必要とする高齢者の増加や核家族化の進行、介護による離職が社会問題となっています。こうした中、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的に、2000年に創設されたものが介護保険制度です。
少子高齢化、高齢化率について
日本は世界的にも顕著な少子高齢化社会の中にあります。少子高齢化とは、出生率の低下と長寿化により、高齢者の割合が増加し、労働力人口の減少が起こる状況を指します。これに伴い、高齢化率も急速に上昇しています。高齢化率とは、65歳以上の高齢者の割合を示す指標であり、その割合が増加することで社会全体の構造が大きく変化しています。 2070年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になると推計されています。
統計局:https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics138.pdf
介護保険制度とは
介護ニーズの増大、介護する家族の高齢化など、家族状況の変化に伴い、従来の老人福祉・老人医療制度による対応には限界が生じてきました。
こうした中、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的に、2000年に創設されたものが介護保険制度です。
以下、3点を基本的な考え方として挙げています。
- 自立支援:単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする。
- 利用者本位:利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる制度
- 社会保険方式:給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用
介護保険の被保険者について
介護保険の被保険者は65歳以上の方(第1号被保険者)と40歳から64歳の方(第2号被保険者)に分けられます。第1号被保険者は、原因を問わずに要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを利用することができ、第2号被保険者は、加齢に伴う疾病(下記、特定疾病)が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを利用することができます。
特定疾病
特定疾病 | |||
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がん(がん末期) | 関節リウマチ | 筋萎縮性側索硬化症 | 後縦靱帯骨化症 |
骨折を伴う骨粗鬆症 | 初老期における認知症 | 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、及びパーキンソン病 | 脊髄小脳変性症 |
脊柱管狭窄症 | 早老症 | 多系統萎縮症 | 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 |
脳血管疾患 | 閉塞性動脈硬化症 | 慢性閉塞性肺疾患 | 両側の膝関節または膝関節に著しい変形を伴う変形性関節症 |
介護サービス利用までの流れ
介護サービスを利用するためには、要介護状態や要支援状態にあるかどうか、その中でどの程度かの判定を行う必要があります。
居住地の市区町村の窓口で要介護認定の申請を行うと、申請後は市区町村の職員などから訪問を受け、聞き取り調査(認定調査)が行われます。
また、市区町村からの依頼により、かかりつけのお医者さんが心身の状況について意見書(主治医意見書)を作成します。
その後、認定調査結果や主治医意見書に基づくコンピュータによる一次判定及び、一次判定結果や主治医意見書に基づく介護認定審査会による二次判定を経て、市区町村が要介護度を決定します。この一連の流れを介護認定と呼んでいます。
介護保険では、要介護度に応じて受けられるサービスが決まっているので、自分の要介護度が判定された後は、自分が「どんな介護サービスを受けるか」「どういった事業所を選ぶか」についてサービス計画書(ケアプラン)を作成し、それに基づきサービスの利用が始まります。
介護サービスの利用について
介護保険で利用できるサービスには、「介護給付」、「予防給付」があり、予防給付とは、介護予防(生活機能を維持・向上させ、要介護状態にあることを予防すること)に適した、軽度者向けの内容・期間・方法で提供されるサービスです。
大きく分けると次のようなサービスを受けることができます。
- 介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
- 自宅で受けられる家事援助等のサービス
- 施設などに出かけて日帰りで行うサービス
- 施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
- 訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
- 福祉用具の利用にかかるサービス
※他、居宅介護(介護予防)住宅改修、介護予防・日常生活支援総合事業
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf
今後の展望として
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制(地域包括ケアシステム)の構築を実現することが求められています。
地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことを必要としており、NTTデータ関西として、DXを活用して地域に根差したシステム造りができればと考えています。
全世代型社会保障検討会議(第6回)でも、介護現場の生産性向上に向けたテクノロジーの普及・促進に向けての話があったように、介護現場へテクノロジーを普及していくためには、介護現場の理解を得て、効果的な技術導入を促進することが重要です。現場の課題解決のためにも、介護業務での課題がありましたら、お気軽にお問合せください。